税理士 港区作ろう

このような条件下では、成功が市場の働きによって決まるわけではないため、エコノミストはこれを「市場の失敗」という。
大方の欧米人は民間部門と公共部門は当然分離しているものと考えている。 現実に起きている事象は理論とまったく符合しないことが多いのだが、欧米のエコノミストの多くが、価格決定における市場の役割を過大に評価しがちだ。
しかし、日本を見ると、一般に認められている理論が現実とまったく関係がないことが一目瞭然だ。 公式のルールでは、日本にもたしかに民間部門と公共部門があり、両者は境界線で隔てられているとされている。
新聞など、標準的な情報を提供する機関も、おおむねこの公式のリアリティーを前提としている。 しかし、実際の日本経済が、公式のルールと符合せず、究極的には法や司法制度の支配を受けない慣行や習慣にしたがってしる巨大な財界官僚組織、各業界の官僚組織、および政府の官僚組織が現実に一体化しているさまに注目した方がいい。
こうした状況の下では、各省庁の官僚は規制官というよりも、むしろ共通の目的に向かってみんなで進めていく運動の参加者である。 大蔵省と金融機関によって維持されてきた「護送船団方式」という言葉は、これを公然と認知するものだ。

この巨大な一体化した官僚装置の中では、市場が企業の命運を最終的に決定するわけではない。 市場の果たす役割はけっして小さくはないが、補助的なものにすぎない。
日本のシステムの内部における資本の流れを理解するうえで、これは重要な点である。 クレディット・オーダリング下位に位置する企業や共通の目的にあまり協力的でない企業への組織的な信用の拒絶を、その内容としている。
日本では信用創造のはなばなしい事例が、1945年以降、二件あった。 一つは戦後の高度成長期にほぼ一貫して行なわれたオーバーローン(超過貸し付け)/オーバーボローイング(超過借入れ)で、本来なら取り残されていたはずの多くの産業部門がごり押し的に発展できたのは、このおかげだった。
もう一つはバブル経済で、この時期、日本の産業は、きわめて低い資本コストに支えられて、円高の影響に対処するため史上最大の設備投資ブームに走った。 クレディット・オーダリングの本質的な特徴は、誰がどれだけ借りられるかの決定が、収益性の予測をもっとも重視して行なわれるわけではないということだ。
日本のこの経済システムは、もう一つのシステムとして公式に認められてはいない。 とりわけアメリカ人は、このような考えを認めるのを長年にわたってしぶっている。
それを認めたら自らの自由市場イデオロギーを問い直さなければならないというありがたくない事態にたちいたるからだ。 日本の与信管理システムは標準的な経済のそれとは根本的に異なっている。
この特殊なシステムには一般に認知されている呼称がないため、私の著作ではそれを「クレディット・オーダリング(信用の差配)」と呼ぶことにしている。 このシステムは、信用の創造、信用の割当て、および財界ヒエラルキーのアジア新興国と日本の違い一国の産業が強大な段階に達したある時点で、経済は何のためにあるのか、改めて真剣に問うてみる必要がある、という主張が成り立つだろう。
日本ではこれが一度もなされていない。 また、異なる原則で動く経済システムが併存することは容認されるべきだが、国際的なゆがみや混乱を防ぐ手だてが講じられるよう、これらの原則をだれの目にも明白になるよう示すことが重要だ、という主張も成り立つだろう。
これがなされていないことが、今日世界を悩ませている経済問題の最大の原因なのだ。 「クレディット・オーダリング」が行なわれる、民間部門と公共部門が融合したシステムは、将来の日苦しんでいる。

これらアジアの新興工業国は、日本とはタイプの異なる苦境に陥っている。 日本の官僚が一貫して阻止してきた外国資本の投資を奨励してきたためだ。
外国の投資家、とりわけ証券投資家は、性急で、疑い深く、大勢につき、風説にたやすく反応する。 「官民融合」システムのゆくえ個々の国が自国の経済をどのように組み立てるかについては、グローバル政府が存在しない以上、なんらかの国際的な主体による最終的な規制は不可能だ。
経済の運営のされ方が望ましいか否かは、その経済の結果を引き受けて生活しなければならない人々が何を経済の目的と考えるかによって決まる。 日本の戦後の経済エリートが思い描いてきた目的は、日本の産業を強くすることだった。
日本経済の奇跡に触発された韓国、タイ、マレーシア、および(前三カ国ほどではないにしても)インドネシアのテクノクラートの頭の中でも、同様の目的が中心を占めていた。 彼らは産業の発展を、市場が求めるやり方に任せてはおかなかった。
大々的な規模で一部企業を優遇し、収益性を無視した大規模な投資を奨励した。 これらの国々は、1950年代、帥年代の日本と同じく、豊かさよりも強さを早急に実現しようとした。
日本と同じく消費者市場が未発達で、日本と同じく過剰設備とそれにともなう過度の輸出依存に1990年代末の現在、日本の当局にはワシントンをはじめとする外国政府や、まじめな新聞・雑誌に寄稿しているエコノミストや各種評論家からアドバイスが殺到している。 しかし、大蔵省や関連機関のこれら当局者が、自らの成長を支えてきた現行システムをオーバーホールするためにどんな手をうてるかとなると、きわめて心もとない。
日本経済の活力を維持するためには改革や大胆な調整が不可欠であることは、いまではだれもが認識しているが、それをコーディネートし、実行する能力と決意を持たない。 民間領域と公共領域が複雑に絡み合った経済システムがもたらす重大な結果はこの他にも多々あるが、紙幅が限られているためこれ以上列挙することはできないし、それらの相関関係を示すこともできない。
しかし、この日本の経済システムの詳しい中味について、世界の経済専門家がアクセスできるしかるべき分析が提示されたことは一度もないという事実は、なによりも心に留めておく必要がある。 社会の富を築く経済へ本にとって有効な経済システムになるのだろうか。
バブルの崩壊以後、大蔵官僚の頭痛をひどくしてきた一方の事態の成り行きをみると、これは緊急に検討すべき問いである。 1990年代後半の日本の深刻な状況が、少なくともその一部については、日本の戦後経済システムを支えてきた制度の直接的な結果だということは、歴然たる事実である。

邦銀の不良債権は、バブル期のクレディット・オーダリング政策から生じた。 家計部門から産業へ着々と富が移転された結果(日本のクレディット・オーダリング政策にはこれが不可欠だった)、日本は発達の不十分な消費者経済(したがって不十分な内需)と、ばかばかしいほどの低金利という厳しい現実を背負わされている。
利益を無視した産業の拡大は過剰設備を招き、これは大きな重荷になっている。 このところ貿易黒字が再び拡大しているとはいえ、世界が日本の都合どおりに日本の輸出を吸収することはできない相談だからだ。
日本の金融システムは、近い将来莫大な数に達する退職者や職にあぶれた労働者を養うだけのリターンを日本のファンド・マネジャーに提供することはでき心とする金融・財政政策が考えられる。

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